神社における祈願・祈祷について 神社で個人的な願い事をするのはどういうことか 神社と陰陽道との意外な関係

山や森といった自然に神は宿る

神社は誰でも境内に出入りしてお参りができる極めて公共的な祈りの場所であり、人々の憩の場であり心の拠り所でもあります。

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神社には必ず「」があります。豊かな森によって育まれてきた縄文文化の記憶が木々に包み込まれた「鎮守の杜」としてカタチを残しているのだと思います。

かつて人々は森の中の屋外にて岩や樹木に神様をお招きしてお祭りを行い、あるいは占いを行って神意を伺い、種まきの時期を決めたり、共同体としてこれからどうしていくのかといった会議も行われていたと考えられます。

神社は人々が寄り集う場所でもありました。

日本人にとって神とは「山」でした。山岳信仰というものが今でもあります。

大神神社のように今でも神社のご神体となっているお山もあります。

よって神社は山の上に作られることが古代は多かったのです。

また、前回記事 古墳にコーフン!?巨大な墓の出現とヤマト政権の成立 とありましたが、かつての古墳の上やその近くに神社が建立するケースもよくあります。

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神様をより身近にした神社

ですが、やはり神様を身近に置きたいと考えるのが日本人です。

柳田國男先生はが『先祖の話』という本の中で仰っているように、日本人固有の神観念を祖霊に求め、「祖霊=先祖」は山の上から子孫を見守り、時に訪れて助けたりと、あの世とこの世をいったり来たりするような存在で、「神=祖霊=先祖」はそう遠くない身近な存在として考えられていたとされています。

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霊峰 御嶽山

神社は人々がむらがる「村」に神社を建て、神様を迎えます。さらにお祭りの時はお神輿の神様をお乗せして田んぼにお招きして五穀豊穣を祈り御願いをします。

お祭りとは賑やかなものです。大きな神社のお祭りでは他国から奉行として大名が采配を振るって行う場合もあります。

お祭りには様々なお供え物が必要です。海山川の幸、刀剣や絹織物や調度品、人々が着る装束や御神幸の行列に参加する人、音楽を奉納する楽人とその楽器と、多くのヒトとモノとカネが必要となって来ます。

 

神社があるからできた
町(マチ)や市(イチ)

近くの街道と神社や村を行き来する道が交わって道路が十字に交わり交差点ができますと、そこは人の往来が盛んになる訳ですから自然とお店や宿といった商家ができ町が出来ます。

もともと基準線に対して直角に交わることを「マチ」と言うそうです。マチとは交わるとか交流する意味が含まれており、マツリもそうだと思います。

やがてマチは市(イチ)に発展します。「座」という組合に入っていないとその市でモノを売ってはならず、商工業者は官衙(お役所)、貴族、社寺に金銭を支払って営業権や販売の独占権を得ていました。

とりわけ神社のお膝元の市ではモノには霊力が籠っているとの考えから、氏神様の力を振り分ける意味もあったのではないかと考えられます。

そういった意味では市もまた神社が中心となって発展してきたのではないでしょうか。

社会」という言葉がありますが、これは神社のように人々が出会いより集って経済を活発化させ地域を盛り上げていくような意味合いがあるともいわれています。

 

公的な神社で個人的なお願い

前置きが少々長くなりましたが、このように神社とは公的な存在であり、そこでは日々神職が皇室安泰と国家の繁栄、社会のために祈りを捧げ祭祀を奉仕しています。

戦前までの神職は半分公務員のような処遇でした。

よって、「神社で個人的なお願いごとをするのはなぜ許されるのか」といった問題が頭をよぎります。

神社の頂点である伊勢の神宮では、天皇以外のお供えは禁止するという「私幣禁断」という原則が長らく貫かれてきました。

もちろん勝手に個人的なお願い事をしてもいけません

今はお賽銭箱がありますが、これは勝手にお賽銭を投げたり置いたりしていく人が多く、お金が落ちて境内を汚すからといった理由であるそうです(ほんとうかな?)

しかし神宮とて祈願・祈祷を受けない訳ではありません。現在では境内の神楽殿という所で一般の人も祈願を受けることができます。

だからといって神様の前では個人的なお願いはしてはいけないといいます。

神前においては只々感謝するだけでなのです。

江戸時代に一大ブームを巻き起こした「おかげまいり」とは「おかげさまで」と、見えない力、おかげを戴いて生かされていることに感謝するお参りでした。

ちなみに、多い時には明和8年(1771年)に二百人もの人が神宮に参拝したといいます。50年から60年のスパンでこの大規模な参詣が起こったようです。

神宮だけでなく、本来神社で個人的なお願いはしません。

してはいけないというよりも共同体のための祈りを行う場所でした。

雨が降らなければ雨乞いをし、疫病が流行ればその原因となる疫神や死者の怨霊を鎮めなだめ、敵が攻めてくれば敵国降伏を祈り、常時も五穀豊饒や国家の安泰を祈るのが神道祭祀における本来的な祈祷のあり方でした。

 

個人祈祷のルーツ 陰陽道

個人のために行う祈祷は平安時代の中期頃に陰陽師により始められたと考えられています。

陰陽師が行う陰陽道とは中国から陰陽五行説を輸入し、日本にもともとあったとされる古神道などと融合して生み出されたものです。

その技術や知識は天文学、地理地政学、暦学、栄養学などの多岐に渡り、陰陽師の役割は治世のために天意を伺うことでした。

天武天皇によって陰陽寮が設けられ、その中で天道を教授する天文博士が天意を伺いそれを直接天皇に報告していたとされます。これを「天文密奏」(てんもんみっそう)といいます。有名な安倍晴明もこの天文博士でした。

そんな天下、国家のための陰陽道でしたが一方では貴族の個人的な願いを叶えるための私祈祷・個人祈願が盛んに行われるようになり、その後仏教にも取り入れられて、神社がそれを行うようになるのは鎌倉時代頃になってからだそうです。

『吾妻鏡』という鎌倉時代の歴史書に源頼朝公が東国の諸神社にお供えをして安産を祈願したという記録があり、その神職の名前まで記録されています。

個人祈祷は陰陽師から始まったとしてもその内容は「お祓い」でした。すなわち元々は神道の祈祷を陰陽師が取り入れて行っていました。

平安時代の日記『帥記』に貴族が神社にお参りする前に陰陽師から「中臣祓」(なかとみばらえ)を受けていたという記述があります。「中臣祓」とは「大祓詞」を用いた祓いであり、神社では今でも年に2回、6月の晦日と12月の大晦日に「大祓式」としてこの祓いを行います。

元々これは陰陽道祭祀でした。

茅の輪くぐりといった催事もそうですし、紙でできた人形を体に撫でて罪穢れを移して川へ流棄(るき)するといった象徴的な呪物を使用した陰陽道の呪術でした。

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現在神社で行われている「大祓式」 田無神社

国家の安定のために大活躍した陰陽師でしたが、戦国時代の応仁の乱により土御門家(つちみかどけ)が京を離れたことで歴史の表舞台から消え去り、現在その影響を神社やお寺に垣間見ることができます。

 

神様と人がつながる儀式が
個人祈祷

いずれにせよ、神道祭祀も陰陽道祭祀も天下国家のためのものでした。

では神社での個人祈祷はどうなるのかといいますと、安産、お宮参り、七五三、車のお祓いや厄祓いといった祈祷を現在神社は行っています。

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なぜそれは可能なのでしょうか。

それは国家安泰のために国家を構成する国民あってのことですから、個人の願いは当然取り次ぐべきということでしょう。

答えは簡単でしたが今回は周りくどく、巡り巡って神社と個人の祈りについて考えてみました。

「女の子にモテますように」とか「お金持ちになれますように」とうい願いも結構ですが、その願いが叶ったのちにどうそれを社会貢献につなげていくかというのが大事だと思います。

一説には神様はその人の全てをお見通しだからわざわざ一生懸命に祈る必要もないといいます。正直に真面目に一生懸命働き、親や家族を大事にして、日々神様に感謝し手を合わせていれば必ず神様は守って下さるという考えです。

それはそうなのですが、祈祷とは人が神様とつながる儀式であります。一般の人が神社の御社殿に上がることはそう多くはないでしょう。

神社での祈願はその願い主の願い事を神職が神様に取つぎ、最後は願い主自らが玉串を捧げて祈りを捧げます。そして必ず神様からのお下がりとして神饌を徹下したものが渡されます。それをいただくことで神様から力を授かることができるのです。

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ご祈願では多くの神社で玉串を捧げて拝礼します

このように、神様と人との交流の場が祭祀であり、個人祈祷とは私事の祭祀なので「私祭」といいます。

夏越大祓

6月30日には多くの神社で「夏越大祓」が執り行われます。一家族につき1、000円程度で気軽に(?)お祓いを受けることができます。

もちろん神事ですので厳粛に執り行われますが、大勢で茅の輪を潜ったりして、とても楽しいもので、半年の罪穢れが祓われ、実に清々しい気持ちになれる行事です。ぜひお近くの神社で参列してみてください。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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