ザックリ解説『古事記・日本書紀』⑦海幸彦と山幸彦

神話から日本の神を知る

前回記事 象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことばを受けてにおいて最後に、日本人にとって「神とは何か」をもう一度確かめてみてはどうかと述べました。

古事記・日本書紀は神々と天皇家の物語ですので、これを読み解く必要があります。前回の神話記事は、ニニギノミコトが天孫降臨の後、地上にて、コノハナサクヤビメと結ばれて子が生まれたところまででした。

ザックリ解説『古事記・日本書紀』⑥天孫降臨

海幸彦と山幸彦

ニニギとコノハナサクヤビメの子のうち、火照命(ホデリノミコト)と火遠理命(ホオリノミコト)は成長し、兄のホデリは海幸彦すなわち魚を取って、弟のホオリは山幸彦すなわち山で獲物を狩り生活していましたが、あるとき弟の再三の申し入れにより二人はお互いの仕事と道具を交換してみることになります。よっぽど釣りがしてみたかったようです。

しかし魚は一匹も釣れず、しかも慣れない仕事をしたせいか、弟は海で釣り針を失くしてしまいます。兄は針を戻せと無理に責め立てたので弟は自分の剣を用いて500もの釣り針を作って差し出すも兄は受け取らず、1000もの針を差し出しても受け取って貰えず「元の針を返せ」の一点張りなのでした。

自分から交換しようと言っておいて兄のかけがえのない大切な物を失くしてしまったのだから無理もありませんが、弟は困り果てて海辺で泣いていました。

そこへ鹽椎神(シオツチノカミ)という潮路を司る神様が現れて「海の神である綿津見神(ワタツミノカミ)の娘が力を貸してくれるであろう」と道を教えてくれました。

オオクニヌシも、スクナヒコナを失って浜辺で打ちひしがれている時に海原から自身の魂の一つがやってきて救われます。そもそもスクナヒコナ自体が海原からやってきていますので、海の遠く彼方から助けがやってくるというのがパターン化しています。折口信夫先生のいう古代人の「マレビト信仰」が垣間見えるということです。

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海底の宮殿へ

綿津見の宮へたどり着いた弟のホオリはワタツミの娘である豊玉毘売(トヨタマヒメ)と恋に落ちて結ばれます。スサノオ、オオクニヌシ、ニニギ、ホオリと日本神話で主人公が異界に降り立つと大抵そこで結婚しますね。

綿津見の宮に住み始めて三年が経ったある日、ホオリは当初の目的をようやく思い出して大きなため息をつきます。「三年も一緒に暮らして嘆いたことなんて無かったのにどうしたの?」と妻。もう三年も忘れていたんだからいいじゃないかと思うかもしれませんが、ホオリは妻の父であるワタツミの大神にもそのいきさつを話すと、父海神は大小多くのお魚さん達を呼び寄せて心当たりはないかと尋ねると、ある鯛の喉からその釣り針が見つかったのでした。一体この三年は何だったのでしょうか?

お気づきと思いますが、この話は「浦島太郎」のお話の原型なのです。

山幸彦の復讐

さて、釣り針が戻ったからさっさと帰って兄に返さなければと普通ならなるのですがそうはなりません。オオクニヌシさんもそうでしたが、「やられたらやりかえす。倍返しだ!」と言ったかは知りませんが、海神は兄をこらしめる策潮盈珠(しおみつたま)と潮乾珠(しおふるたま)という二つの玉をホオリに授けます。

地上にもどった弟は海神に教わったとおりに呪いの言葉をかけながらその針を兄に返しました。しばらくすると次第に兄は貧しくなり、心は荒んできて弟を攻めこんできました。「こんちくしょー呪いやがったな!」という感じでしょうか。

すると弟は海神から授かった潮盈珠(しおみつたま)を使って兄を溺れさせます。二つの玉は潮の満ち引きを操る玉なのでした。兄が哀れみを乞えば弟は潮乾珠(しおふるたま)で潮を引かせて救いました。何度かこれを繰り返したようで兄は悩み苦しんでついに弟に服従することになりました。

その後、ホオリは綿津見の宮にて妻トヨタマヒメに子を宿していましたので出産のために妻がやってきます。海辺に鵜の羽で葺いた産屋を建てていましたがその工事も終わらぬまま産気づいてしまい、出産の際「決して覗かないように」と妻は言います。古事記で「決して覗かないで」はイザナギ様が黄泉の国に行った時もそうでしたが、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんが熱湯風呂の上で絶対に押すなよ」と言っているようなもので、絶対に覗いてしまうものなのです。

何で見ちゃいけないんだろ?」何のためらう素振りも見せずに覗いてしまったホオリは、大きな鮫(ワニ)がのたうち回って苦しんでいる姿を目撃してしまいます。見られたことを恥じたトヨタマヒメは鵜葺草葺不合命(ウガヤヒキアエズノミコト)を産んで海へと帰ってしまいます。

男が出産に立ち会うのはタブー

今では病院で夫が出産に立ち会うことも増えてきてはいますが、本来出産が行われる産屋には男性は決して立ち入ることはできませんでした。

出産を手助けするのも産婆さんという専門の女性でした。

出産は血を伴いますし、今と違って出産によって母親も胎児も命を落とすこともしばしばありました。血や死は穢れ(ケガレ)であり、ケガレは様々な厄難の原因と考えられていたため、忌むべきこととして、出産に際して家の火をけがすのをおそれ、別火の生活をするものであったようです。古くは出産のための仮小屋を村のはずれや山中、海辺などに臨時に建てて、出産がすめば燃やしたり、壊したりしていたそうで、このような習わしが昭和40年代まで残って行われることがあったようです。

トヨタマヒメは禁を破った夫を恨んで許しませんでしたが、我が子に対する愛しさもまた捨てきれず、妹の玉依毘売(タマヨリヒメ)をウガヤヒキアエズの養育のために遣わします

成長したウガヤヒキアエズはそのタマヨリヒメと結婚し、(叔母さんと結婚!)五瀬命(イツセノミコト)、稲氷命(イナヒノミコト)、御毛沼命(ミケヌノミコト)、若御毛沼命(ワカミケヌノミコト)という四人の子が生まれますが、稲氷命は常世の国へと渡り、御毛沼命は母の国である海原に入っていったといいます。

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