ニルヴァーナ「Smells Like Teen Spirit」は何故日本でもヒットしたのか? 痛々しいティーンの心情

▲画像:20100213.blogspot.jpより


日本では売れないアーティスト 
スモール・イン・ジャパン

前回記事のレディオヘッドもそうですが、ニルヴァーナは日本でも特に人気が高かったバンドとして知られます。二つのバンドは世界的に人気があるので当然と思われがちですが、海外で人気が高いからといって日本でも必ず売れるとは限りません。

海外で大成功しているにも関わらず、日本はあまり売れないバンドのことを「スモール・イン・ジャパン」というそうで、例としてザ・フーグレイトフル・デッドAC/DC、現在も活動中のマッチボックス・トゥエンティーといったバンドが挙げられるそうです。逆に、日本でしか売れない海外のバンドのことを「ビッグ・イン・ジャパン」というそうです。

表題に掲げた曲「Smells Like Teen Spirit」は1991年にニルヴァーナが発表し大ヒットとなり、以後彼らの代表曲になります。

ニルヴァーナの登場はシーンに衝撃を与え、ロックの歴史を語るとき「ニルヴァーナ以降」と呼ばれるように、今のロックミュージックにいまだ影響を及ぼしているといいます。しかしこの曲の歌詞、難解というか支離滅裂な内容で意味が全くわかりません。みんなよく分かっていないのに雰囲気で「イエーイ」と盛り上がったのでしょう。

以下に、一部歌詞の和訳を紹介します。

 

弾を込めて、友達を連れてこいよ
負けたり、振りをするのは楽しいぜ
彼女は羽目を外して自己満足さ
俺は汚い言葉を知っている

ハロー、ハロー、ハロー、気分は最低だろ?
ハロー、ハロー、ハロー、気分は最低だろ?
ハロー、ハロー、ハロー、気分は最低だろ?
ハロー、ハロー、ハロー

明かりを消せば、危険は減る
俺たちはここにいる、楽しませろよ
馬鹿みたいだ、感染するぞ
俺たちはここにいる、楽しませろよ

混血
アルビノ
モスキート
性欲
イェー

ヘイ…イェー

以上 stimaro.seesaa.net より一部抜粋

 

この歌詞については、様々な憶測で分析がなされてきたようですが、当のカート・コバーン氏によれば「意味は無い」とか「みんな深読みしたがるけどあれは単なるゴミだよ」とかいっているようです。

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アメリカの制汗剤
ティーン・スピリット

曲名を日本語にすると「10代の精神みたいなニオイがするぜっ」となるわけですが、2013年5月25日に放送されたラジオ番組「マキタスポーツラジオはたらくおじさん」において、映画評論家の町山智浩さんが「Smells Like Teen Spirit」について面白い見解を述べておられましたので以下に紹介したいと思います。

 

マキタ で、コレちょっと、詞が、あのぉ、難解だと言われていて、でまぁ、あんまこう、まともな詞を訳して、翻訳されたものってあんま日本人伝わってないと思うんです

町山 はい。これはねぇ、あのぉー、カート・コバーン(Nirvanaのボーカルで曲を作った人物)自身がすごくアメリカで聞かれたんですね、生きている時に。『どういう意味なんだ?』と。

マキタ はい

町山 「わからない」って言っているんです、本人(笑)。

マキタ なんかそうなんですよね?「わからない」ってボヤかしたようなことを言ったりとか

町山 そうなんです。で、他の歌については結構説明してんですけど、この歌に関してはね「俺もよく分かんないんだ」って言っているんですよね。

マキタ だってこの曲ってなんか、本人あまりに売れちゃったから嫌っちゃったじゃないですか、途中ですごく。

町山 そうそう、やらなくなったでしょ?

(中略)

町山 そうそうそう。ただね、これ僕がねアメリカに着いた時に、十何年前にアメリカで暮らし始めた時に、凄くこの歌についてショッキングな、えー、記憶があるんですよ。

マキタ ほう

町山 この、「Teen Spirit」って、「Smells Like Teen Spirit」っていうのは「10代の魂の匂いがするぜ!」って意味ですよね。

マキタ はい

町山 で、結構いい年になっても思春期の匂いがするぞ、みたいな歌なのかなと思ってたら・・

マキタ うんうんうんうん

町山 スーパーに行ったんですよ。薬や・・薬とか売っているところ。そしたら「Teen Spirit」っていう商品が置いてあるんですよ。

マキタ え、なんですかそれは?

町山 それね、あの、10代の女の子が体に付ける制汗剤なんです。

橘 うーーーん

マキタ えっ!コロンみたいなもの?

町山 そうそう。今、日本では何が使われています? 脇の下。

マキタ なにが・・

橘 8×4(エイトフォー)?

町山 8×4みたいなやつ

マキタ 8×4。あっ、そういうことなんだ!

町山 そういうことだったんです!実は。

マキタ なんだよそれ!

橘 ふーーん

町山 そういうことなんです、実は。で、本当なのかな?と思って「えっ!これ関係あるのかな?」って。最初はほら、「Smells Like Teen Spirit」って歌が売れたから、それが商品化したのかと思ったんですよ。

マキタ アハハハ(笑)。後で便乗して。

町山 便乗したのかと思って、アメリカ人の友達に聞いたら「いや、昔からTeen Spiritってあったんだよ」。

マキタ じゃあ文字通り日本だったら8×4の歌

町山 8×4の匂いがするぜ!って歌みたいな、ホントは(笑)。

一同 アハハハ!!(笑)

町山 で、なんかカート・コバーンは女の子が使うものだから知らなくってその商品名を。でなんか、友達の女の子に「あなたTeen Spiritの匂いがするわ」って言われた時に『俺もう20歳を過ぎているのに10代臭いってこの女に言われたぜ』って思ってこの歌を書いたんだと

マキタ はぁー

橘 うーん

町山 すごく精神的な意味にとらえちゃったらしいんですよ、カート・コバーンは。

マキタ なるほど。そこでチョット変な齟齬があるわけですね。

町山 そうそうそう!単にその女はTeen Spiritって商品の匂いがアンタからするわ、って言ったんですって。

(中略)

マキタ そのカート・コバーンのある種の勘違い、早とちりって彼の才能なんでしょうね。

町山 才能なんですね。

マキタ 精神的なものでとらえちゃったんだ。

橘 うんうん

町山 「あなた、いい年こいてんのにチョット思春期っぽいわね」って言われたんだと思うんです。

マキタ 「ガキ臭いわね」

町山 嬉しかったんでしょうね(笑)

マキタ 嬉しかった!アハハハ(笑)

町山 ちょっと嬉しかったんでしょうね(笑)

マキタ もっと言えば「童貞臭い」って言われたようなもんですよね

町山 そうそう。そっから想像を膨らませて作った歌だったんですね。ホントは勘違いだったっていう真相でした。

マキタ 面白いですねぇ―。だって世界的にヒットしたわけだからぁ。

町山 だからアメリカ以外は分かっていないですよ。その商品が売っていないからアメリカ人以外は全員「10代の魂」だと思ってるんです。

マキタ そうですよね、どっちかというと。

町山 でもアメリカ人は「あぁ、アレのことか」って。

マキタ 「8×4の歌だ」って(笑)。アハハハ(笑)

以上 後世に残したいラジオの話 より抜粋

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出典:cocobit.jp

 

曲が作られた経緯の真相はわかりませんが、面白い推測だと思います。というか、ほぼそうに違いない。日本人にウケる理由がそこのところにあるように思えます。

ニルヴァーナが日本で人気があるのはなぜか?

レディオヘッドとニルヴァーナに共通する点を挙げるとすれば、「好きだけどいいたくても素直に言えない」という10代の屈折した女性に対する考え方、行動、考え方。簡単に言えば中二病というやつです。

イケメンで自分に自信があって積極的に女性に話しかける人をよそ目に、「自分なんてだめだと」勝手にあれこれ考えて結局何にもできなかった男子の思いや妄想を表現してくれるのがこの二つのバンドではないかと思います。レディオヘッドはナイーブな感じで葛藤したりする感じです。

一方、女の子に「10代の精神みたいなニオイがする」つまり青臭い、ガキ臭いと、実際は制汗剤のニオイのことを言われたのに、言葉そのままを受け止めてしまったカート。その苛立ちや葛藤からヤケになり、妄想を拗らせて「Smells Like Teen Spirit」のような詞を書いてしまったのではないかなあと思います。

10代の頃、こっちを見てクスクス笑う女子が自分の事を笑っているのではないかと、多くの男子(主にイケてない自分に自信がない人)は感じるようです。そうして疑心暗鬼に陥っていきます。そんなモヤモヤした気持ちを怒りとともに吐き出すような音楽ではないかと思います。この曲は内向的で、ヲタクみたいな挙動不審な様子を醸し出しているような感じがします。

かつては女の子に「キャーキャー」いわれ、モテるのがロックでした。それに対しオルタナティブロックは「だめな自分」「イケてない自分」を表現した「ヲタク達のロック」でした。こういったものだったからこそ、言いたいことをはっきりと言えない日本人の心情に響き、受け入れられたのではないでしょうか。さえない自分。等身大の自分をさらけ出す。そういった意味ではイギリスのブリットポップなんかも同じスタンスといえます。

「うん、もうキモいって言われても大丈夫。僕にはロックがある。」と勇気を与えてくれたのが90年代のロックでした。

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