来訪するカミ マレビト論の実際② ニュートリノ

前回に続きマレビト論の実際についての記事です。前回は芸能の呪術性に注目してその信仰について考えてみました。

来訪するカミ マレビト論の実際① 神事として発生した「芸能」の呪術性について

おさらいですが、マレビト信仰とは何かと申しますと以下のような内容になるかと思います。

マレビト信仰について

『折口信夫全集第二十巻』(中公文庫)より

・たましひは肉体に常に在るものとは考えていなかった

・肉体はたましひの一時的、仮の宿りにすぎない

・たましひはいつでも外からやってきて人間の肉体に宿り、宿った瞬間から、そのたましひの持つだけの威力を、宿られた人が持つことになる

・宿ったたましひが遊離し肉体を去ると、そのたましひの持つ威力も失うことになる

(p.199から200より抽出解釈)

カミは遠くからやってきて、我々人間に不思議な力を授け、それにより幸福や繁栄を手にすることができると、日本人は考えてきました。

これは祭祀や信仰世界の話ではなく、実際的にもそうでした。

古代のヤマト王権は、その優れた技術と独自の交易ルートにより、他の豪族には決して手に入れることのできない鏡や刀剣、装飾品を加工したり、遠くからやってきた渡来品を「威信財」として各地域の首長に分配して統治を行いました。

538年には仏教が伝来。「超越的存在」が仏像という、今までビジュアル感覚のなかった日本人の目に形をもって飛びこみ、瞬く間に人々の心を魅了しました。

奈良・平安時代に遣唐使・遣隋使として送られた仏僧を始めとした優秀な方々は、中国から宗教・法律・文書・音楽・医学・衣料・食物・土木技術といった様々なモノを命懸けで持ち帰り、国を発展させ、人々の生活に豊かさをもたらしました。

日本人は、遠くからやってきてこの日本列島に定住しました。祖先のやってきた山の向こう側、海の向こう側から……。カミは祖先のいる遠く離れた異なる世界から幸福をもたらしてくださる。そういう信仰を培ってきました。

稲作農耕を長く続けてきた日本人です。田んぼに水を引きれる川の水が湧き出でる山の上にご先祖様たちがいて、我々子孫が困らないように世話をしてくれているに違いないと考えたものでした。

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宇宙のはるか彼方からやってくる
ニュートリノ

日本がその研究分野において、世界の先端をリードしているのが「ニュートリノ」という素粒子に関する研究です。

ニュートリノとは素粒子のうちの中性レプトンの名称。素粒子とは、物質を構成する最小の単位です。私もこれは、なんとなーく理解していました。

ニュートリノはとても小さくて地球をもスルスルと通り抜けてしまい、1秒間になんと100兆個も我々の体内を通過しているそうです。

物質を細かーく分けてみますと、分子、原子、原子核などと進み、最終的にアップクォークとダウンクォークと電子という3つの粒に行き着き、これらの粒は今のところ、これ以上分けることのできない最小の粒である「素粒子」だと考えられているそうです。物質を作る素粒子は12種類の中、ニュートリノもその素粒子の仲間ということです。

原子核とその周りを回る電子の距離を例えるなら、東京都の中心にサッカーボールを置いたような距離で、まさに物質とは実はスッカスカの空間だらけなのです。

ニュートリノは1930年に科学者の頭の中で生まれました。オーストリアの物理学者パウリは原子核が出す放射線(ベータ線)について研究を行う中で、電気を帯びていなくて、知らないうちにどこかへ飛び出してしまう、幽霊のような粒子があると仮定しました。これが「ニュートリノ」でした。

1933年にはニュートリノと名前が付けられ、1956年にはアメリカの物理学者ライネスらが、原子炉から生まれるニュートリノを捕まえることに成功しついにニュートリノが発見されます。

1970年代にはアメリカの物理学者デイビスが太陽からやってくるニュートリノの観測

を行いますが、ニュートリノは理論からの予想の1/3程度しか発見されず、これを「太陽ニュートリノ問題」と呼んで、その後約30年間にわたって物理学上の大問題となりました。

1987年には日本のカミオカンデグループが太陽ニュートリノの観測を開始し、16万光年彼方の超新星1987Aからやって来たニュートリノを捕らえて「ニュートリノ天文学」という新しい学問が始まりました。

カミオカンデは2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士が考案したニュートリノを観測する装置です。

 

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小柴昌俊(1926〜)出典:www.kantei.go.jp

1996年にはスーパーカミオカンデが完成し、1998年にニュートリノ振動の発見により、それまで質量が無いと考えられていたニュートリノに重さがあるということを、世界で初めて発見しました。これは70年来の定説を覆す大発見でした。

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これはスーパーカミオカンデの写真です 出典:www.nikken.jp

この発見が決め手となり、2015年に東京大学の梶田隆章博士と、クイーンズ大学(カナダ)のアーサー・マクドナルド博士はノーベル物理学賞を受賞したのでした。

つらつらと説明致しましたが、詳しいところは説明できませんので以下のリンクの記事で確認いただければと思います。

スーパーカミオカンデ

なぜ我々は宇宙に存在するのか?」こういった謎に迫るニュートリノの研究で、日本が世界をリードしているのは、遠くからやって来るカミが強力なエネルギーをもたらし、我々を豊かにするというマレビト信仰が根底にあったりするのかなと思ったりします。

マレビト論では、「たましひ」は生命を生じさせる力、すなわち産霊(ムスビ)の力をもたらすと考えられています。ニュートリノは「物質はなぜ存在するのか」といった産霊のメカニズムを解明する手がかりです。

カミオカンデとはまさに、カミを迎える装置なのかもしれません。

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