ビブリオ『同志社大学神学部(著・佐藤優/光文社)

 

私は20代半ば過ぎて
大学に入りました

大学に入る時は、当然だれでも卒業後の就職を見越して進学する大学や学部を選ぶわけでが、文学部ですとか、特に私のような特定の宗教について専門的に学ぶとなると、ある程度覚悟を決めなければならない部分もあります。

「大学で神道について学びたい」という思いは、20代後半の既婚の私にとっては一大決心といいますか、賭けといいますか、人生が負け戦となる覚悟で挑む挑戦だったように思います。

しかも卒業する頃は30歳で、しかも神社の家でも、コネもない私が神主になるというのは、厳しい状況でした。

当然、神社以外に新卒採用で企業が採ってくれたりする訳もなく、(フルタイムで働きながら勉強していたので本格的な就活は無理でした)潰しが利かず、卒業後どうしたらいいのかあまり考えないようにしていました。

今思えば、随分と危ない道を歩んできました。人生なんとかなるものです。

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作家 佐藤優氏は
神学部出身

さて、本題ですが、この表題の本の著者である作家の佐藤優氏は、元外交官で、主任分析官として対ロシア外交の第一線でご活躍されていたようです。しかし、2002年に鈴木宗男事件に連座して逮捕され、2009年に最高裁で有罪判決を受けて外務省を失職され、現在のご職業の作家になるという経歴をお持ちです。

佐藤優氏 出典amazon.co.jpより

書店棚でもお馴染みのお顔ですね。佐藤氏は実に多くの本を書かれている作家さんですが、大学時代はキリスト教神学を専攻され、その学生時代の体験記を綴ったのが『同志社大学神学部』という本です。

出た大学と学部を題名にするなんて斬新であるし、しかも350ページ近い厚み。大学時代のことをこの分量を書くだけの体験を持ち、生きている人がどれだけいることでしょう。

内容はキリスト教神学についてはもちろん、当時の学生運動のことや、酒飲み話、教授や学友との白熱した議論について等、佐藤さんの大学入学から大学院を卒業し、いかにして外交官となったのかが綴られています。

佐藤さんは東京地検特捜部に逮捕され、512日間独房に閉じ込められていたのに平然としていられたのは、若いころにキリスト教神学に触れたことと関係しているといいます。

しかし一方で氏は、「法学、哲学、文学、経済学、理学、工学、医学など神学以外の学問は人間のために役立っている。」「神学は、人間の役には立たない虚学だ。」といい、「虚学である神学を学ぶことによって、人間は自らの限界を知る。そして、その限界の外部に、目に見えないが、確実に存在する事柄があることに気づく。このような外部に存在する超越性のおかげで、人間は自らの狭い経験や知識の限界を突破し、自由になることができる。わたしは神学の勉強を通じて自由になることができた。」といっておられます。(p.4〜5より)

神学部とは牧師を養成する教育を行うところですが、キリスト教に関心のある者ならば洗礼を受けていなくとも入学できるということで、佐藤の場合〈無神論〉について研究したいとのことで入学されたとのことです。

同志社大学神学部から外務省に入ったのは佐藤さんが初めてだそうです。神学と外交は直接関係なさそうに思うように多くの人が思われるかもしれませんが、相手の宗教について深く知っているということはかなり重要です。

それに、きちんと神学を勉強しようと思ったら英語はもちろん、聖書が書かれているギリシャ語・ヘブライ語、プロテスタントの本場のドイツ語といった外国語が出来なければならないし、カントやヘーゲルの哲学を消化してないと理解出来ないような教義・教説もあったりして、大変な教養を身につけなければ到底取り組めるものではないようです。

そんな下地があっても外務省の試験を受けるにあたって、国際法・憲法・経済学を独学で学ばねばならなかったようで、やはり畑違いといいますか、牧師さんの学校から外務省に入るのはやはり大変だったそうです。



キリスト教信仰がきっかけで
外交官を目指す

さて、はじめは無神論者、唯物論者になるつもりで、敵地に乗り込んでいく気持ちで神学部に入学した佐藤さんでしたが、教授にも突っかかっていくような態度だったようです。それにも関わらず、教授たちは友人のようにして正面から受け止め、キリスト教の神について正しい理解ができるように導いてくださったといいます。

やがて、キリスト教神学の世界に魅了されていき、洗礼を受けて信仰に入り、数十万冊も蔵書のある神学部の図書館で、暇さえあれば本を読む生活が始まったといいます。「わたしの信仰が、本を読んで知識をつけることを要請するのである。そして本を読んで身につけた知識によってわたしの信仰が深まるのだ。」(p.203本文より)

佐藤さん曰くキリスト教は「神が罪を負った人間を救済するために、およそ2000年前にたった一度だけ地上に派遣した、真の神で真の人であるイエス・キリストに従うことを教える。」(p.4より)宗教であり、イエス・キリストを信じることによって救われるという信仰ということです。

神学を学び、信仰を深めるうちあることをきっかけに佐藤さんは外交官を目指すこととなったそうですが、詳しくは本をお読みいただければと思います。

話は冒頭に戻りますが、とかく何かを学ぶということは、お金を稼ぐための手段と考えられがちです。まあ実際もそうなのです。多くの学生が大学進学の際は、就職に有利な大学・学部を選びます。

そういったものと全く真逆の、「人間の役に立たない虚学」である神学を、身命を賭して学んだ佐藤さんの姿から、大学で勉強するとはどういうことなのかを教えられます。

役に立つ・立たない、金になる・ならないという価値判断ではなく、自分が心底やってみたいこと、好きなこと、興味があることに徹底して取り組むことで、人間が形成され、結果として人生が豊かなものとなるのではないかと思います。

これは、とにかく猛烈に勉強がしたくなる本です。奮起が必要な人にオススメします。


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