神の庇護のもとにある唯一の国 知られざる「神の国」アメリカ その神とは? バッドレリジョン「American jesus」

トランプ氏の目指す 偉大な国アメリカ

昨年11月の大統領選を制し、来期の米大統領に就任が一週間後に迫ったドナルド・トランプ氏ですが、彼の言動には選挙戦中から選挙勝利後にかけて日増しに注目が高まっています。

U.S. President elect Donald Trump speaks at election night rally in Manhattan, New York, U.S., November 9, 2016. REUTERS/Mike Segar

現大統領のオバマ大統領はかつて「Change」をスローガンにしていましたが、トランプ氏は「Make America great Again(偉大なアメリカを再び)」を掲げています。その実現のために「メキシコとの国境沿いに壁を築き、建築費用をメキシコに支払わせる」「イスラム教徒の入国を禁止する」等の過激な発言を繰り返したり、アメリカのTPP脱退表明を出しているわけですが、トランプ氏の目指す「偉大な国」とは一体何なのでしょう?

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神の国アメリカ

今年の大統領選挙においてキリスト教各宗派の票、いわゆる宗教票の獲得が重要視されたことから分かるように、アメリカ人は非常に信仰を重んじる国なのです。

2007年のハリス世論調査によれば、アメリカ人が生活において宗教が「非常に重要」と回答した人が60%でした。イギリス12%、フランス10%、ドイツ8%と比較するとその差は歴然で、さらに「神を信じるか」という問いに対し、アメリカ人は95%が信じると回答しています。

米国の紙幣や貨幣には「IN GOD WE TRUST」という文字が刻まれている通り、「我々は神を信じます」という言葉が国家のモットーになっています。つまりこれを認めない人は信用できない人となり、非国民扱いされてしまうのです。

アメリカの人口の86.5%がキリスト教徒ですが、そのうち55%がプロテスタントが占め、カトリックは25%強となっており、残りはモルモン教や黒人キリスト教会、新興宗教も含める諸宗派となっています。プロテスタントは大きく主流派と福音派に分けられます。

福音派は1970年以降に人気が急上昇し、アメリカの人口の三分の一は福音派であるといいます。福音派は聖書の記述を絶対視する原理主義的な宗派であり、保守的かつ他宗教には不寛容という態度です。主流派は聖書の記述を絶対視せず、他宗教にたいして寛容な態度をとるといいますので、同じプロテスタントといっても考えが全く逆ということです。ちなみに主流派とは数の意味ではなくあくまでも「本流」といった正統性を示す名称です。

福音派はボーン・アゲインという、神を感じ懺悔して救いを求めて生まれ変わる神秘体験を経て洗礼を受けることを重視するバプティスト派やペンテコス派があります。かつてブッシュ(ジュニア)大統領がアルコール依存症を克服した際に神の存在を確信する体験(ボーン・アゲイン)をしたことが有名です。その神の声によってイラク戦争を始めたといわれる所以は、ブッシュのスピーチライターがバリバリの福音派だったことや、福音派の指導者がイラク攻撃を支持したことにあると思われます。

アメリカ建国の背景
千年王国論=神の国建設

1650年頃、イギリスから迫害を逃れたピューリタン達がアメリカへ渡り、後にアメリカにおけるプロテスタントの主流派となりました。彼らは「キリストの御名と福音」のため、新大陸に「神の国」を建設するという信念を抱いてやってきました。その根底にはヨハネの黙示録に記されている「千年王国論」という、世界の終末にキリストによる最後の審判が下される前に悔い改めれば「千年王国」、すなわち「神の国」に入り救われる考えがありました。これはやがて19世紀半ばの西部開拓を「マニフェスト・ディスティニー(明白なる天命)」という、「神に祝福された特別な国アメリカ」という発想に結び付いたといいます。

千年王国論はキリスト教シオニズムを生み、古代のユダヤ人国家イスラエルのあったパレスチナにユダヤ人を帰還させ、終末が来る前にキリスト教の世界を完成させるという考えを生み出します。

アメリカにとって、自身の信仰の実現させるユダヤ国家イスラエル実現は、宗教的情熱を刺激するに余る事業だと考えられます。血で血を洗うような終わりの見えない中東の紛争の背景にはこのような宗教的問題が存在しています。



バッド・レリジョン
American jesus

アメリカにはバッドレリジョンというバンドがあります。1979年LAにて結成されたということで、40年近いキャリアを持つベテランですが、現在でもバリバリ活躍しています。

結成以来パンクバンドとして、世界情勢・戦争・貧富差に対する問題と真摯に向き合う姿勢を貫き続けています。その楽曲の歌詞は難解なことで知られ、英語圏の人でさえ辞書を引かないと分からないような難解な語彙を多用するため、一部からはレキシコン[辞書]パンクスとも呼ばれているようです。歌詞を書いているヴォーカルでリーダーのグレッグ・グラフィン1964年11月6日生まれ)がコーネル大学で生物学の博士号を取得したインテリで、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で講師を務めているそうです。なのでインテリパンクなどとも呼ばれています。

このバッド・レリジョンは直訳するとBad Religion 即ち、「悪い宗教」という意味で、その彼らの代表曲が1993年にリリースされた「American jesus」という曲です。直訳すると「アメリカの神」です。

この曲では、トランプ氏の掲げるような「偉大な国」について歌われています。

(以下歌詞の抜粋)

俺が世界市民である必要はない

なぜなら俺は国籍によって祝福されているから

俺は強大化していく国民の一人

俺たちは俺たちの流行を強要する

俺たちを引っ張り出そうとするものがある

俺たちを引きずり降ろそうとするものがある

だが俺たちには力と重要な存在がある

そしてそれはそこら中に潜んでいる

俺たちはアメリカの神を手にした

各州間でそれを目にする

俺たちはアメリカの神を手にした

彼は大統領の蓄財の手助けをしている

俺は地球の人間を哀れ思うよ

なぜならごく限られた人間しかアメリカに住むことができないからだ

外国人は少なくとも俺たちの道徳性ならコピーできる

彼らは訪問はできても、滞在することはできない

貴重なごく少数だけが繁栄を手にすることができる

それは俺たちを新たな自信とともに歩ませる

俺たちには死んだ時に行く場所を手にしている

そして創造者はそこにおられるのだ

俺たちはアメリカの神を手にした

国家の信義を高めるのだ

俺たちはアメリカの神を手にした

毎日数百万人を圧倒し続ける

(中略)

俺たちはアメリカの神を手にした

各州間でそれを目にする

俺たちはアメリカの神を手にした

彼の権力を行使している

神の庇護の下にある唯一の国家

神の庇護の下にある唯一の国家

神の庇護の下にある唯一の国家

始めに歌詞を読んだ時、アメリカ賛歌なのかと思いましたが、よくよく見てみると痛烈なアメリカ批判でした。彼らにしてみれば都合のよいように神を利用することは許しがたいものだったと思われます。

曲がリリースされた1993年頃のアメリカは冷戦に勝利して好景気に湧くころ。ところが今は一変し、新興国が台頭。不景気や度重なる戦争の戦費で辟易し、オバマ大統領任期の政策でアメリカは、強国から普通の国になってしまいました。

偉大なアメリカを再びのためにトランプ氏は「仕事を創り出す」「より効率的な世界の警察官になる」の政策の柱に掲げています。再び神の名のもとに世界を圧倒するのか。今後注目していきたいと思います。

参考文献


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