ビブリオ 目に見えない資産「インタンジブルス」の宝庫という日本 その資産とは?

今回はある本を紹介したいと思います。

この本が出版されたのは、リーマンショックショックから2年経った2010年。もう7年も前に出版されたものです。

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始まって久しい
アメリカの凋落

この頃、GMやクライスラーといった自動車のビックメーカーが相次いで経営破綻しました。アメリカでは6人に1人は自動車産業に携わっていたといいます。

主力産業が大打撃を受けたアメリカ。国民の経済的格差が広がり、中間所得層が衰退。中間所得層に属する人口が全体的多数で亡くなってしまったアメリカ社会。今もこれは続いています。

今年、就任したドナルド・トランプ米国大統領は、産業の復興と雇用の創出により、アメリカを再び偉大な国にしようと目標を掲げています。トランプ大統領は前任のオバマ大統領の政策の多くを廃止すると明言しています。

就任以来、大型景気刺激策、医療保険改革(オバマケア)、ウォール街規制などの画期的な政策を行い、「核兵器のない世界を追求する」と表明したオバマ大統領は、国防予算を削減し、社会保障を拡大し、アメリカ国民を平等化しようと試みたようです。しかしながらその政策は結果的に評価されず、国民の支持率は高いものの、政策への国民の理解を十分に得られず、その不満を解消することはできませんでした。

 

 

前掲書によれば、日本は戦後、アメリカをずっとお手本にしてきた。産業分野では大量生産の方法から経営に至るまで、ずっとアメリカ型の経済を真似してきた日本だったが、2000年頃からそれを反省する向きが出てきたといいます。

しかし、日本型経営に戻れるかといえばそう簡単にもいかない。終身雇用制を確保するほど今の時代の企業に余裕はない。第3の選択として「古い日本の中に答えを見出し活用する」という道があるといいます。それが表題に掲げた、目に見えない資産「インタンジブルス」なのです。

数値化できない価値

目に見えない資産「インタンジブルス」とは、賃借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)には載らない価値を総称する概念です。

貸借対照表とは、会社が事業資金をどうやって集め、どのような形で保有をしているかを表すもので、これにより、会社の持っている財産や借金を読み取ることができます。つまり、会社の全財産が一目でわかるバランスシートなのです。

目に見えない資産「インタンジブルス」とは具体的にどういった資産なのか。本書のなかで、日下さんは次のように述べられています。

日本はまさに「インタンジブルス」の宝庫であると思う。日本人には美を求める心や平和を尊ぶ心や愛の心がたくさんある。また「道徳心」「好奇心」「忠誠心」「愛国心」などが、どこの国にも見られないほど豊かにある。これら無形のものが、場面場面で「一所懸命」とか「工夫する」とか、「約束を守る」「仕上げに凝る」「仲間を助ける」とかの形になって現れる。(P.5より抜粋)

こういったものは数字では計れないもので、非常に高い価値を有しているといいます。

日本の社会は相互信頼という関係性で成り立っています。モース氏によれば、1980年代、GMやクライスラー、フォードといった会社はトヨタの生産方式を学んだそうです。

日本車の需要はアメリカで非常に大きいものでした。広いアメリカ。近くの街まで100キロもあるような砂漠のど真ん中で車が故障すれば命にかかわります。都市部でも治安が悪い所で故障したりすれば、修理を呼ばねばなりません。できれば避けたいものです。日本車は故障しないという信頼性で買われ、しだいにアメリカのメーカーを圧倒していきます。

しかし、日本に生産方式を学びにきたアメリカ人は、それを理解できなかったといいます。一人の作業者が、複数の工程の作業を覚えるよう訓練する、多能工の育成にしてみても、なぜそれが機能しているのかが分からない。

実際は先輩が後輩に聞いて習ったり、近くにいる人が教えてくれたりと、ごく自然な感じで学んでいくのだと思いますが、制度化されていないことがあまりに多く、しかもそこが重要な部分だったのです。このような職場環境が生まれるのは日本文化が前提にあって、外国人にしてみれば摩訶不思議な「目に見えないもの」であったようです。
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日本をモデルにしていた
オバマ政権

アメリカの企業は経営層が主役であるのに対し、日本の企業は社員が主役です。アメリカ人は会社を信用しませんが、会社も社員を信用しません。

日本型経営とは会社と社員が長期に渡って信用し合う関係性がベースにあります。アメリカのように、生産量の増減で代替可能な人材を雇ったり、余ればクビにすればよいという問題ではありません。ここに、アメリカのものづくりが衰退した理由があるのではないかと、大塚氏は語っておられます。

日下氏によれば、世界の不景気の根底には、「相手を言いくるめて儲けた者の勝ち」という、アメリカの不道徳な経済が世界に蔓延し、世界中の道徳崩壊したによるものということです。さらに、アメリカの経済を立て直すには道徳力をどう立て直すかが重要とであるとおっしゃいます。

企業の中に「インタンジブルス」が育たない文化の行き着いたところは、製造業だけでなくアメリカ全体の衰退だった。オバマ大統領は、経済政策と同時に道徳力をどう立て直していくか、見識と手腕が問われている。(P.110)

モース氏によれば、当時(7年前)アメリカは日本の真似をし始めたといいます。80年代には到底理解できず無視してきた挙句、やっと取り入れ始めました。それは自動車メーカーに限らず、オバマ政権にしても日本をモデルにしていたようです。

オバマ政権の政策で、アメリカは〈偉大な国〉から、〈普通の国〉へと方向転換しました。その急激な変化に対する揺れ戻しが、トランプ政権の誕生させたのではないでしょうか。アメリカは再び、アメリカとしての道を歩み始めました。


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